就業者の高齢化問題、そして若者をはじめとする人材不足への対策が課題となっている土木・建設業界。これを打破するために国土交通省では、モノのインターネットとも呼ばれるIoT技術を活用することを推進する i-Construction に取り組んでいます。

これまでの3k、それを新しい3kへ。どのように変えていくのかを簡潔にまとめてみました。

i-construction の促進へ

IoT

土木・建設分野の特性について

土木現場などの建設業をイメージしたときに、どのような光景が頭に浮かぶでしょうか?屋外での汗水を流した重労働という男性像を連想する人が多いかと思います。

従来の土木および建設業界は、一品受注生産、現場屋外生産、労働集約型生産、から抜け出すことができずにいました。

一品受注生産発注者から注文を受けてから生産を行い、完成後に引き渡す
現地屋外生産環境問わず、施工現場にて生産施設を設けて工期が終わると撤収する移動を伴う
労働集約型生産元請け下請けが共同して、多数の就業者が施行するという重層的な環境

土木・建設業界には、これら3つの特性があるとされてきました。そのため製造業などで進んでいる、プレハブ化(工場生産方式)、自動化・ロボット化などへの取り組みが遅れていたのです。

老朽化が進む社会インフラ

また、生活の基盤となる橋梁やダム、トンネル、高速道路や港湾など、社会インフラともいう構造物の発注者は、8割が国や地方自治体です。経済状況によって予算や国の方針が変化するので、そういった影響を大きく受けやすいのも建設業界の特性といえるでしょう。

高度急成長、バブル崩壊、政権交代、2011年に発生した東日本大震災などの災害、これらの影響から公共投資事業も増減してきましたが、人口減少の見込みや財政赤字なこともあり、投資額の減少も予想されています。

ですがその一方で、>土木・建設業界では人材不足が深刻な問題となっているのです。

就業者の高齢化と人材不足

生産性や品質の向上、コストダウン、納期短縮などといったイノベーションが進むどころか、3K(キツイ、キケン、キタナイ)と呼ばれる労働環境の改善すら至っておらず、担い手となる若者の入職がないというのが実状。

そして就業者の3割が55歳以上とされている中で、数年後には大量の離職者がでることが懸念されています。

社会インフラの多くに老朽化がみられる現在、建設業界を支える担い手の確保や育成が、大きな課題として取り上げられています。

そこで国土交通省では、IoT技術を土木・建設分野に導入することで、これらの問題を改善しようと i-construction(アイ-コンストラクション)という取り組みを進めています。

IoTとは
Internet of Things(インターネット オフ シングズ):モノのインターネットという。遠隔操作、情報を知る、データの送受信などを離れたモノに対して対して情報収集して可視化するという、インターネットによりこれまでに繋がっていなかったモノをつなぐことを意味する。
i-constructionとは
i-construction(アイ-コンストラクション) とは国土交通省が推進する政策。改革が遅れていた土木・建設の世界に、情報通信技術や先端テクノロジーを導入することで、自動化・ロボット化などを推進し、生産性や品質、安全性等を高めていくことを目的とする。

i-constructionの3つの柱

国土交通省では i-construction の推進によって、1人当たりの生産性を1.5倍にすることを目標に設定。ICTや3次元データを活用した土工は、これまでに584件実施されてきました。(2018年6月現在)

i-construction を推進するために、国土交通省では次のような3つの視点を柱に据えています。

ICT の全面活用

ICTとは「Information and Communication Technology」(インフォメーション アンド コミュニケーション テクノロジー)の略で、情報通信技術を意味します。

具体的には測量から設計、検査、維持管理まで、ドローンやパソコン、ロボットなどをデジタル情報によって連動させることで、正確かつスピーディーに作業を進行させることです。

工程請負内容
調査・測量地質調査会社
測量会社
ドローンなどUAVを使い、3次元測量点群データを取得
設計コンサルタント3次元CADによる設計
施工建設会社ICT建機による敷均し
検査発注者GNSSローバーなどによる現地検査
維持管理・更新建設会社
コンサルタント
音響ビデオカメラによう水中構造物の健全性確認
これにより、品質の向上と納期の短縮、作業員の負担軽減や安全性向上などを図ります。

規格の標準化

寸法等の規格が統一された部材の普及拡大や、鉄筋やコンクリートの規格化・標準化などを推進することで、プレハブ化等によるさらなる品質向上やコストダウン、短納期化などを推進します。

2つのキセイの打破

  • イノベーションを阻害している書類による納品などの「規制」
  • 年度末に工期を設定するなどの業界の「既成概念」

この2つのキセイを打破し、業務の効率化と作業の平準化などを推進します。

つまり i-construction は、

建設現場にIoT技術を導入して、ICT標準化の推進や規制緩和および意識改革を行う

というもの。

国が積極的に普及を進めている取り組みです。

世界のドローン市場は?
世界全体でみても、ドローン市場は急速に拡大しています。全世界においてドローンに係るベンチャー企業は700社以上もあり、その半数は北米です。続いてヨーロッパ、アジア、オセアニア、中東、アフリカと、先進国から発展途上国に至るまで広がりを見せつつあります。

また、中国の動向も気になるところです。中国はドローン大国ともいわれており、スマートフォンや携帯電話の工場がある中国南東に位置する深圳市では、ドローン工場化しています。軍事用、民間用などさまざまな目的として伸びしろをみせている中国のドローン市場では、2020年には200億元超(3,200億円)になると予測されているのです。

規制が緩和されているイタリアでは、すでに点検用ドローンは実用化され販売しているといいます。イタリア企業によって建設された風車やタワーなど大型の建造物の検査に活用されています。イタリアを含むEUでは、ドローンの規制統一化も進められており、欧州航空安全機関(EASA)を中心に規則案を採択され、2019年までには統一する計画となっています。(2018年9月現在)

2020年には112億ドル以上にもなると予測されているドローン市場。各国それぞれでドローン市場は右肩上がりを見せています。ホビー用と産業用ともに国の規制の違いはありながらも、どんどん加速化するということは、いかにドローンがさまざまな産業に活用できるのかが伺い知れますね。

i-construction が目指す建設業界の未来

建設

i-construction の推進は、建設会社の経営を近代化し経営環境を改善に導きます。

それと同時に労働環境や待遇を改善することも可能となり、労働者の高齢化や若者の建設業界離れといった問題の抜本解決も期待されています。

生産性の向上

ICTの全面的な活用や施工時期の平準化などのより、生産性を1.5倍に向上。将来的には2倍を目指しており、その結果、収益性の向上やコストダウンによるさらなる競争力強化が期待されます。

より創造的な業務への転換

自動化・ロボット化が進むことで、建築現場の無人化・省力化が進み、人間はキツイ・キケン・キタナイの3Kから解放されます。

人間は安全・快適な屋内でより創造的な仕事に従事することになり、スマートな職場へと変化します。

労働環境・待遇の改善

生産性向上や仕事量の安定等により企業の経営環境は改善し、賃金の引き上げが期待されます。

また、正社員への登用や安定した休暇制度など、労働者の待遇改善も同時に期待されます。

他の製造業の2倍といわれる労働災害も、自動化・ロボット化などによって大幅に改善される事が期待されます。

《キツイ》《キケン》《キタナイ》の3K職場から、《給与》《休暇》《希望》を持てるという新3K職場へと大きく生まれ変わらせることが、i-construction が描く未来像なのです。

ドローンによる測量で効率化を図る

このように多くの可能性を秘めた i-construction。その鍵を握る1つがドローンの活用です。施行過程においてドローンは測量分野で積極的に使われています。

建設現場では精密な測量データの入手が不可欠です。従来の人の手では危険な作業な上に膨大な時間を要し、また費用も大きくかかりました。

ドローンを導入することによって、レーザースキャナーで精密な地形を測ることができます。それを基に3次元図面としてデータ処理させ、簡単かつ高品質な設計が可能です。また、遠隔操作が可能なICT重機で施工するにも、重機のカメラとは別に現場の状況を確認するためにドローンは必要不可欠なものとなっています。

橋

完成させた構造物の形状が設計通りに行われているかを確認する出来形管理にもドローンは大いに活用できます。崖や橋など人間が近づきにくい場所の点検や検査でも、ドローンでその役割を担うことが十二分に出来るのです。

国土交通省では、平成28年度から「新たに導入する15の新基準及び積算基準」と題する通達を出しており、ドローンを使った測量やICT重機による土木工事を拡大することを表明しました。

新基準及び積算基準
調査
測量
設計
1UAVを用いた公共測量マニュアル(案)【新規】
2電子納品要領(工事及び設計)【改訂】
33次元設計データ交換標準(同運用ガイドラインを含む)【新規】
施工4ICTの全面的な活用(ICT土工)の推進に関する実施方針【新規】
5土木工事施工管理基準(案)(出来形管理基準及び規格値)【改訂】
6土木工事数量算出要領(案)【改訂】(施工履歴データによる土工の出来高算出要領(案)【新規】を含む)
7土木工事共通仕様書 施工管理関係書類(帳票:出来形合否判定総括表)【新規】
8空中写真測量(無人航空機)を用いた出来形管理要領(土工編)(案)【新規】
9レーザースキャナーを用いた出来形管理要領(土工編)(案)【新規】
検査10地方整備局土木工事検査技術基準(案)【改訂】
11既済部分検査技術基準(案)及び同解説【改訂】
12部分払における出来高取扱方法(案)【改訂】
13空中写真測量(無人航空機)を用いた出来形管理の監督・検査要領(土工編)(案)【新規】
14レーザースキャナーを用いた出来形管理の監督・検査要領(土工編)(案)【新規】
15工事成績評定要領の運用について【改訂】
新たに導入する15の新基準及び生産基準 (出典:国土交通省)

ドローンで空の産業革命

i-Construction 普及のためには、まず若者をはじめとする担い手の確保そして育成、これらの強化が重要となります。これまでに施工業者向けと発注者向けにと、全国486ヶ所で講習などを実施してきました。

施工業者向けの講習・実習には、ICTに対応できる技術者や技能労働者の育成。そして発注者向けには、i-Construction の普及や監督また検査職員の育成を目的とした講習・実習を行ってきています。この取り組みには36,000人以上が参加してきました。(2017年3月末時点)

ドローンは、空撮目的などでしか認知していなかったという人も大勢いるかと思います。ですがそれだけではなく、このように土木・建設、農業、災害救助、警備、物流と、ドローンはさまざまな産業に参入しつつあり、ドローンは空の産業革命を起こしているといわれているのです。i-construction の取り組みは、ドローンが誕生して一気に実現性が見えてきたと言っても過言ではありません。

日本の土木・建築業界の浮沈がかかっているi-construction、その命運を握っているのは、実は小さな小さなドローンテクノロジーだったのです。