今年で3回目となるロボットを使った山岳遭難救助コンテスト「Japan Innovation Challenge」。昨年は初参加であったものの、見事に課題クリアをいたしました。今年も参加しますので、昨年までとの違いなど、概要をご紹介します。

「Japan Innovation Challenge」とは

「Japan Innovation Challenge」は山岳遭難救助想定したロボットコンテストです。北海道上士幌町にある山を使って数日間行われ、2016年から始まり今年で3回目。災害支援のロボット研究の加速、災害支援のロボットおよびシステムの全国普及を目的に行われています。

課題達成チームには賞金も

課題達成チームには賞金があります。参加費用は無料ですが、現地への移動費用や宿泊費は自己負担。全国から実力派が集まってきます。

会場である「北海道上士幌町」は、北海道中部の十勝管内にある町。南北に長い地形で、南部が平野、北部が多くの山岳を有する山岳地帯となっており、実際の山岳救助を想定した舞台にふさわしい場所となっています。

設定シナリオは「雪」による遭難を想定

イベント開催時は10月中旬なので、早ければ山に雪が少し降っていることもあります。過去開催時は雪はなかったものの、初年度は悪天候と強風により開催が見合わせになる事態も。

実はコンテストの設定シナリオにも雪が関わってきます。以下簡単なシナリオ説明です。

「ある登山者が、夕方急に変わった天候により吹雪に見舞われ道に迷い救援を呼ぶことになった。レインコートを持参していたものの雪は想定外で、悪天候のためヘリもすぐに向かえず、日没が近いため救助隊も翌朝まで入山できない。そのため、翌朝の救助に向けて救助ロボットが出発する。」

コンテストは天候に配慮して実施されるものの、実際に山岳救助にドローンが活用されるようになれば、降雪中の飛行も十分あり得るでしょう。人間による救助がすぐにできない状況でロボットがどれだけ活躍できるかが重要になりそうです。

平成30年前期、北海道の山岳遭難発生状況

北海道警察が発表している平成30年7月31日時点での山岳遭難発生状況は1月から7月までで78件で、遭難者数は108人。死傷等割合は無事が半数をやや上回るものの負傷で37%、死亡で7%となっています。

遭難理由としては道迷いがほぼ半数で、次いで転倒や滑落等。特に北海道の冬は完全な雪山となるため、一刻も早い救助が望まれます。ドローン等ロボットの活躍が期待されます。

参考 北海道警察
https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/chiiki/sangaku/002-toukei/h30.pdf

初参加の2017の様子と結果

合同チーム「チーム東北JV」として私たちが初参加したのが2017年。この年の課題は以下3点でほぼ初年度と同じです。

課題1「発見」(遭難者の発見と現在地の確定)賞金50万円 毎日1組
課題2「駆付」(遭難者の元へ機材を届ける)賞金500万円 達成チームで分配
課題3「救助」(遭難者を指定場所へ搬送)賞金2000万円 期間中1組

結果詳細は以下2017オフィシャルサイトで確認できます。
https://www.innovation-challenge.jp/archive/2017/index.html

5日間の日程で行われ、「チーム東北JV」は3日連続「駆付」をクリアしました。この年は実験的に「発見」のみ、夜の部も開催され達成チームがでました。

ちなみに参加チームは全部で13(人数73人)、機体数は81機。チーム人数や機体数に制限はなく、「チーム東北JV」は7人10機体で、機体数としては2番目に多かったです。

2017に関してはオフィシャルページより報告書がダウンロードできます。遭難者に見立てたマネキン発見時の写真、熱画像等の記録が確認でき、2018に向け役立つ情報が多いので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。

2017に参加した感想

初年度と比べ「駆付」は、コツをつかんだチームが複数出てきたように感じます。「発見」はどれだけ確実に効率よく探せるかがポイントになりそうですが、実際には人海戦術同様に経験も大事かもしれません。公式に公開されているデータでは遭難者の登山経験等も設定されおり、これも探すポイントを決める参考になるかと思います。

「Japan Innovation Challenge 2018」実施期間・時間

期間 2018年10月10日~12日
時間 17:00~21:30
準備時間 15:30から
退出時間 22:30まで

今までと2018の違い

2018になって大きく変わった点は2点。過去2回の開催を経験に、より実用を想定したものになっています。

夜間開催になった

設定シナリオでもそうですが、実際に実用が想定されるのが夜間の可能性が高いため、従来日中行われていたものが今年から17時~21時半に変更になりました。開催期間も5日間から3日間に短縮されています。

課題3「救助」がなくなった

現在の技術ではロボットによる「救助」はまだ難しいのか、過去開催で参加できたチームがほとんどありませんでした。そのためか、今年からはほぼ飛行タイプのロボットの活躍にしぼったかたちになっています。夜間になり「発見」「駆付」の難易度も上がっていることから、賞金設定も課題1「発見」で300万円、課題2「駆付」で200万円(それぞれ達成チームで分配)に変更になっています。

2018コンテストのポイント

同時に使用するロボットの台数は2台

これは例年通りですが、登録できるロボットの台数に制限はないものの、同時につかえるのは2台という基準があります。役割を決めて迅速に使用ロボットを切り替える必要がでてきます。故障等に合わせて予備機も必要です。公式サイトによると過去使用された機体ではDJI社のPhantom、Mavic、MATRICE等、自作機も。

夜間飛行

コンテスト参加者のほとんどが熟練のパイロットであるものの、やはり夜間飛行は日中とは全く異なります。しかし夜間はむしろロボットの特性を活かせる機会でもありますので、人海戦術ではできない遭難救助能力に期待が高まります。

映像・画像の高い分析能力

課題1の「発見」は、リアルタイムでの映像とドローンが撮影してきた画像を解析する必要があります。昨年の報告書を見ると、発見時の確認画像がすべて公開されていますが、素人では拡大画像を見ても遭難者に見立てたマネキンがどれだかわからないレベルです。慣れもありますが、映像と画像の高い分析能力が必要になります。過去参加チームでは自動で解析を行うソフトを用意しているチームもありました。

今回は夜間になるため熱画像の分析がメーンになるのではないでしょうか。昨年の夜開催時の判定写真が非常に参考になります。

ちなみに熱画像をつかった訓練は、2018年に神戸市消防局と民間事業者が行っています。自治体レベルでの夜間救助訓練は珍しく、この時は映像で遭難者役の人が手を振る様子が、赤外線カメラの映像で確認できたようです。

参照元
神戸新聞https://this.kiji.is/344378969500353633

・レスキューキットの破損をどう回避するか

「駆付」で使用するレスキューキットはマネキンの周囲3m以上8m以内に運ぶ必要があります。重量は3kg。昨年の報告書を見ると破損も多く見られました。当然近すぎても遭難者にぶつかる可能性があるのでNG。運び方はチームによっていろいろな方法がとられているようで、いかに安全に正確に運べるかがポイントになります。

2018の意気込み

「駆付」は昨年と同様の方法を考えています。「発見」も惜しいところまでいったため、今年はぜひ達成したいところ。いずれにしろ夜間になることから、それを想定した上で作戦を練っていきます。

参加を考えている方へ

以下今後参加を検討されている方へ、コンテストそのもの以外のちょっとしたアドバイスです。

現地に行くのもなかなか大変

帯広空港から車で約80分ですが、イベント参加者は機材等も多くなることから、車を使ってフェリー経由が現実的です。食事も昨年までは終了後に帯広まで移動して食べて、また上士幌町に戻って……ということができたのですが、今年は夜間開催なのでそれができません。日中のうちにしっかり食べて、夜の分は簡単なものを買って持ち込む感じになりそうです。

防寒対策も怠りなく

それと、とにかく寒いです。今年は夜開催でさらに冷えます。防寒グッズは「着こみすぎじゃない?」というくらい、たっぷり持ってきてください。われわれもチーム一丸となって完全防寒で挑んでまいります!