農業における深刻な人手不足や後継者問題。2020年には、農家全体の約70%あまりが70歳以上になると予測されています。高齢となって農業経営が困難になったとしても世代交代できないということが、農業分野の大きな課題としてあげられています。

近い将来の深刻な問題をクリアしていくために、効率的に農作物を生育する環境作りにICTを取り入れたスマート農業という取り組みが進められています。

農業ICTとはなにか?

農業を次世代へとつなげるためには、ICT機器が重要不可欠なものとなることは間違いありません。

ICT機器を取り入れないという人の中には、新しい物を好まないという気持ちも事実としてあるかと思います。その一方で、「使い方が分からない」「どうしてICT機器が必要なのか?」「ICT機器がなんのことだかさっぱり…」という声があるのもまた事実ではないでしょうか?

2018年現在、日本各地のさまざまな機関で、農業ICTについて目が向けられています。

農業就業者向けのセミナー、農家と連携した実証実験―――。個人農家だけではなく、農業へ参入するベンチャー企業、行政として i-Construction(アイコンストラクション)の推進への取り組みなど、国が一丸となって農業における課題の解決へとつなげていこうとしています。

農業ICTとはなにか?それを以下の表で簡潔にまとめました。

農業に使われる主なICT機器
スマホ・タブレット屋内外問わず情報の管理、記録、交換
パソコン農作物のデータ管理や処理および分析
サーバーインターネット上のデータ保管場所。複数人と情報共有
ドローン農作物の育成状況を撮影。農薬散布および害虫駆除作業
ICT農機GPS機能を搭載した農機の自動操舵など
カメラ圃場(ほじょう)への遠隔管理および監視
センサー圃場(ほじょう)の状態を把握

私たちが日頃使っているスマートフォンやパソコンから、コンバインなどの農機や赤外線などのセンサーも農業ICTです。

農業ICTを簡単にいえば、時間と労力のいる農業に、インターネットやロボットなど、ITという最新技術を導入して、便利な状態にするための道具です。

農業ICTでできること

農業に最新の技術を導入といっても、その全てを使う必要はありません。どの目的で何をどう使うかが大切です。もちろん、あえて使わないという選択肢もあります。

それぞれのツールを最大限に活用できれば、農業の発展に期待できます。そのためにも農業ICTで、どのようなことができるかを知識として学んでいきましょう。

作業の効率化

どのような分野でも経営するからには、扱う商品の管理や労働者への給与計算などは必ず関わります。農業ICTは、まさにこういったことも含まれます。農業ICTは、パソコンやスマートフォンなどのハードウエアだけではなく、それらに入っているソフトウエアも指すのです。

会計ソフトや商品管理ソフト、エクセルなどでまとめあげたものなど、人の手では手間がかかったりミスをする恐れがあるものも、素早く正確にこなすことが可能です。

他にもハウス栽培や農機具などへの遠隔操作、自動制御など、現場まで行く作業を省略化かつ効率的に行うことができます。

複数人での情報共有

スマホを使い、コミュニケーションアプリ LINEやメッセンジャーなどやSNSでの情報交換も農業ICTとしてのツールとして農業に有効活用できます。また農作業の計画や進捗状況などをクラウド上で管理することにより、複数人で共有することも可能です。

圃場の様子を伝えたり、同じ就業者としてヒントをもらったりと、離れた場所でも農業を見る、そして見せる。見える化に取り組むことで、農作物の収穫量や品質の向上につながる可能性を秘めています。

生産コストの削減

生産コストの削減は、人件費や労力との深い関わりがあります。先に述べた業務をソフトウェアで管理したり、遠隔操作で行ったりすることで、必然的にそれらへの省略化にもなりコスト削減の余地が生まれます。

また、農作物をドローンやセンサーなどを使い、より精密なデータを取得すれば、肥料や資材などの的確な量を把握できるでしょう。

収穫量や品質の向上

農作物の収穫量や品質の向上には、先に述べた情報の共有もありますが、ドローンやセンサーなどで取得したデータ量が蓄積されればされるほど、より精密さが増します。

急な天候の変化に見舞われたとしても、過去のデータを基にして最適な作業管理ができるでしょう。このようなデータで全て完璧にできるとまでは決していえません。ですが、大雨や猛暑またエルニーニョ現象など、近年における異常気象などを考えると、精密なデータは収穫量や品質の向上の糸口になるのかと思います。

農業ICTの支援について

農林水産省では、ロボットやドローンなどをはじめとする先端技術を活用して、省略化かつ生産量や質の向上を実現するよう、研究機関や一般企業、就農者と合わせて、スマート農業という取り組みを行っています。

その中の1つとして、ベンチャー企業やIT企業などと協力して、2013年11月に『スマート農業の実現に向けた研究会』を立ち上げました。スマート農業加速化実証プロジェクトとして、モデル農業を作り、戦略的な技術開発に取り組んでいます。

事業内容の1つとして、大規模な水田、超低コスト輸出用の米、農地野菜などの営農類型ごとにわけスマート農業実証農場を整備し、生産から出荷までの一連の流れをデータ収集。先進技術で体制を組んだ農場を、就農者たちは見ることができたり、実際に試せたりと、実際に体験できる場として提供しています。

実証農場で得たデータは、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(略:農研機構)から助言や指導により、技術面や経営面の両視点への分析や解析を行い、適切な農業体系のあり方を検討していきます。

プロジェクトの流れ
スマート農業加速化実証プロジェクト

農林水産省では、スマート農業加速化実証プロジェクトに31年度でおよそ50億円の予算を組み込んでいます。

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構とは
略名は農研機構。農林水産省所管の国立研究開発法人である。組織形態は、本部、そして5つの地域農業研究センター、7つの研究部門、3つの重点化研究センターで成り立つ。
参考文献:農林水産省 > スマート農業の実現に向けた研究会

若者に知って欲しい近未来の農業

いまや1人に1台は当たり前になったスマートフォン。黒電話からはじまった時代と比べると、文明の利器としても大きな変化をもたらしました。パソコンにおいても同様です。Windowsが誕生してから使い勝手の良さ、コンピューターが持つ能力の高さに人間の頭脳は到底及びません。自動車もいまや自動運転する時代です。

これまでの農業は、就業者の長年の経験からくる知識が頼りでした。その知識の引継ぎも、時間を要するものといえるでしょう。必要だったのは緻密(ちみつ)な処理能力ではなく、ベテランしか持つことができなかった知識から得る勘案でした。そういったものを、まさに文明の利器で変えていく時代となったのです。

農作物育成には、ドローンや農業用ロボットを使って、パソコンやスマホまたタブレットで生産管理およびデータ解析を行えます。記録したデータをクラウド上に保存することで、複数人との情報共有することも可能です。

データを客観的にみることにより、作業の省略化および効率的に。それと同時に収穫量や品質の向上という、スマート農業を実現できます。汗水流して出来上がるトマトも美味しいですが、精密なデータ管理によって産まれるトマトもまた、味の深さを知る結果へとつながるでしょう。

これからの農業は、スマート農業と呼ぶにふさわしい事業として。あなたも挑戦してみませんか?

次世代農業への未来展望図

農業ICTにはさまざまなツールがあり、ひとえにこれが必要という訳ではありません。どのICT機器を使うかは、何を育てているか?どの時期に何をすべきか?経営者の方針に深くかかわってきます。生育状況や時期によっても違ってきます。

例えば、スマホを使って日々の育成状況を日記としてつけることは、ICT機器の活用といえます。雪国の地方において、圃場をICT農機で除雪作業を行うこともそうであるといえるでしょう。

さまざまな場面でICT機器を使うことによって、少人数で効率的に農業を営むことも夢ではありません。

もちろんICT機器を使わずに行うという従来の方法もあり、今現在もそれを忠実に守っている農家が数多くあるのも事実です。

日本の食文化は、これまでに篤農家(とくのうか)が築き上げてきた歴史があるからこそ発展、豊かなものとして維持できています。農業という産業を生んだ先人の努力、それを受け継いできた篤農家に敬意を払い、これからの新しい農業を切り開いていきましょう。