2018年9月現在、ドローンは農業に関するさまざまな研究、開発、実証実験が行われています。日本におけるドローンの農業分野においての参入は、まさに空からの湧きおこる革命といっても過言ではありません。

スマート農業への取り組み、農業の未来図について考えていきましょう。

農業の現状と問題点について

深刻な人手不足

農業に関する人手不足は、実に深刻な問題だといいます。農業就業者、全体の平均年齢が65歳を超えている一方で、担い手となる若い人からの農業入職者が圧倒的に少ないのが現状。世代交代となる時期において大量の離職者がでる恐れがあるのです。そうなると日本の食文化も大きく変わってくるかもしれません。

農業を引退して農地を引き渡したとしても、農業には多くの人の手が必要となります。まるでイタチごっこのように、人手不足の問題はリアルタイムでつきまとうことに…。このままだと日本各地あちらこちらで、この問題が生じます。そもそも、農業を継ぐ若者もいなければ、農業に嫁ぐ若者もいないというのが厳しい現状といえるでしょう。

農業分野において、経営の規模拡大どころか維持管理すらできなくなる人手不足の問題。悪循環を断ち切るために、従来の方法から新しい方法にシフトチェンジしていく必要性があるといえるのです。

国(各自治体)としての取り組み

農林水産省では、農地の有効活用をするための施策の1つとして、農地中間管理機構という組織を作っています。各都道府県に設置された同組織が、地域内で分散されている農地を借り受け、まとまりのある形として、新たな担い手に貸し付ける取り組みをしています。これにより、大規模な農業経営を実現させ、農業の維持そして発展につなげようとする試みです。

この取り組みには、3つのサポートが用意されています。

認定農業者制度交付金や融資を受けるために、農業者が作成した農業経営改善計画を市町村が認定する制度
認定新規就農者制度新規で農業を営む人を支援する制度。就農計画を提出して市町村に認定されると給付金が受けられる。
集落営農集落単位で農業生産に取り組む営農の形態。

 
傾斜などの立地条件の悪い農地への整備や保全活動、集落営農への広域的なサポートなど、多方面から農業分野の維持および拡大させる取り組みを行っています。

このような取り組みは、農業の構造改革を加速化および競争下を強化につながります。農業ICTへの推進に精力的に支援をおこなうことで、新しいスタイルの農業を切り開く道筋を作ることになるでしょう。

農地中間管理機構では、女性の農業経営者も積極的に活用しているといいます。2023年までには、以下の目標を掲げ、農業構造の改革、生産コストの削減を図っています。

  • 担い手の農地利用が全体の8割を占める農業構造の確立
  • 資材および流通面などでの産業界としての努力も反映させ、米の生産コストを2011年全国平均比から4割削減
  • 40代以下の農業従事者を40万人に拡大
  • 法人経営体数を5万法人に拡大
参考文献:農林水産省 > 農林水産業・地域の活力創造プラン

スマート農業として活用されるドローン

農業分野においてドローンがはたす役割は、非常に大きいといいます。これまでは農家の経験や知識をもとに行われてきた農薬散布。農地の状況は、季節であったりそのときの環境によって大きく異なります。

雨の日が続いたり、真夏日が多かったり…、その変化に対応しながら農薬を散布する量を決めるのは、長年培ってきた経験というものがデータになっていました。ですがそれは、ごく限られた人間にしかないデータです。

そのデータをデジタル化するというのが、ドローンを使う最大のメリットです。

ドローンにセンシングカメラを搭載して農地を撮影することによって、農作物の生育状況を知ることができるのです。それをデータ化して分析を行えば、いつどのくらいの農薬を散布すれば良いのか、効率的に施肥することが可能となります。

また、取得したデータは蓄積すればするほどにより精密さが増すので、農作物の収穫量が増えるとともに品質の向上へもつながるでしょう。

農林水産省は、ロボット技術やICTを活用して、超省力および高品質な生産を実現すべく、『スマート農業』という新しい農業を推進しています。農地中間管理機構のサポートとともに、スマート農業を確立させていくことで、人手不足を解消すると同時に新規就農者の確保、栽培技術力を高めることが期待されています。

ドローンの農薬散布に必要な知識や技術

これまでにも空中からの農薬散布として無人ヘリコプターが使われてきました。手作業で行うよりも効率的ですが、誰でも簡単に扱えず、また機体も高価なため、無人ヘリコプターでは農業の根本的な解決へはつながらないのが現状です。

それを変えられるものとして期待されているのが先にも述べたドローンを使った農薬散布です。

ドローンは、無人ヘリコプターに比べると比較的安価であり、機体も小さく持ち運びに便利なことが特徴。ですが、誰もが簡単にドローンを使い農薬散布を行えるわけではなく、そのためのルールが定められています。食卓へと運ばれる農作物は、安心かつ安全な管理下で生育するのが必須条件です。そのような点から、知識がない状態では扱えません。

無人ヘリコプターにしても安全に運用するためのルールがあってこそ、歴史を積み重ねてきました。そしてその歴史があるからこそ、ドローンの農薬散布にもつながったといっても良いのではないかと思います。

ではここで、一般社団法人農林水産航空協会(農水協)の空中散布におけるルールをみていきましょう。

認定をうけた教習施設と整備所

農薬散布を行う者には、農水協の認定をうけた施設で教習を受け、学科試験と実技試験に合格することで、認定証が発行され登録できます。

認定されている整備所においては、機体登録を行い、機体の運用や点検、メンテナンス等が行われているか把握するための役割を担っています。また、認定された整備所では、農薬散布における飛行許可の代行申請が可能です。

操縦士&機体の登録と飛行許可

農薬散布をする操縦士は、上記で述べた教習後にオペレーター登録および機体登録と、その2つを揃えて飛行許可を受ける必要があります。飛行許可を受けて初めて農薬散布を行うことができるのです。

そして農薬散布をするにあたっては、安全に基づいたさまざまなルールがあります。その一部を抜粋します。

風速3m/s程度以下時
高度作物から2m
飛行速度10~20㎞/h
散布量1分間に1Lが一般的(他、農薬に記載されている指示に従う)

 
この他にも視認性や薬液落下分散する基準があり、農薬散布をする際には安全を重視した運用を行わなければいけません。

ドローンで農薬散布をする飛行時には、オペレーターの他にもナビゲーターを配置して事故が起こらないように細心の注意を払い計画を立て、万が一事故が起こった際も速やかに対応できるよう、安心かつ安全を充分に配慮する必要があります。

また、機体は使えば使うほどメンテナンスが必然。安心して食卓まで運ばれるためには、機体のコンディションは常に最善を保たなければいけません。

農薬散布用ドローンの未来

2018年現在、ドローンの農薬散布には、液体を粒剤として散布装置を変更できるタイプもあります。このことから、肥料散布や除草剤散布、幡種(はしゅ)まで実現させるべく、散布装置の研究をしている段階です。散布するものは、形状や散布範囲など条件が異なるので、開発していくのは容易なことではありません。

また、同時に開発が進めてられているのがオートパイロットです。これについても、機能はできても気温や風の強弱、そして湿度など、毎日環境が変わることから、実現させるにはまだまだ先の話ではあります。

ですがこれらが実現されれば、農業の効率が劇的に上がるのは言うまでもないでしょう。

行政、企業、オペレーター、農業従事者―――。それぞれの立ち位置での努力と連携によって、新しい農業として展開、そして拡大していく未来が期待できますね。